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貸借対照表(バランスシート/BS)の英語表現

 

会計英語は、ある種専門的な単語であり、その勉強を特別に行わないとビジネスで困ることがあると思います。今回は会計英語を学びつつ、経理知識も簡単に解説していきたいと考えています。

 

・資産の部の会計英語

 

先ずは、貸借対照表(バランスシート/BS)の左側に関する会計英語ですが、そもそも資産の部は流動資産と固定資産に分類されます。

 

流動資産か固定資産の分類は、1年ルール(One-year rule)に基づいておこなわれ、1年以内に現金化または費用化する資産かどうかを基準として判定します。

 

ですが、ゼネコンのように製造工程が1年を超となるケースでは、正常営業循環基準(Normal operating cycle rule)に従い、棚卸資産等が1年を超える場合であっても、流動資産と判断することが出来ます。

 

流動資産の部

・Current assets 流動資産

 

Current ratio 流動比率流動資産/流動負債)100~150%が望ましい

 
・現金及び現金同等物 Cash and cash equivalents

最も換金性の高いCash and cash equivalentsですが、Cashには手元現金のほかに、預金残高も含まれ、Cash equivalentsには、現金への換金性(Liquidity)が高く、満期が比較的近く、(通常3ヶ月以内)かつ金利変動のリスクがあまりない有価証券が含まれます。下記がその例となります。

 

米国財務省短期証券(アメリカ合衆国政府(米国財務省)が発行する米国財務省証券のうちで、償還期間が1年以内の短期国債のことをいいます。利払いがない代わりに額面をディスカウントしたプライスで発行される証券(割引債)で、償還時に額面で支払われます。)

 

Commercial paper/CP(企業が短期資金調達のために、公開市場にて割引形式で発行する無担保の手形です。無担保ですので、企業の信用力が反映されます。額面価格は1億円以上をバーとしており、有価証券ではなくいわゆる手形なので、社債が証券会社のみで扱われている一方で、CPは銀行等でも扱われる。社債に近いですが、社債の償還期間は1年以上なのに対して、コマーシャルペーパーは通常1年未満で30日以内での運用が多いです。また、金利は発行する企業の信用力で決まります。)

 

MMF/money market funds(MMFは外国債券に投資をする公社債投資信託のことを言います。銀行の外貨預金と性質を同じくして、外貨MMFは外貨ベースでの元本割れリスクを回避するために、安全性の高い短期債券を中心に運用されている商品となっています。)

 

・Short-term marketable securities 有価証券(償還日1年以内債権、売買目的有価証券等)

 

償還日が1年以内となっている債権や、売買目的の有価証券などのことを言います。企業分析の際はCash and cash equivalentsに加えて、short-term marketable securitiesまでを実質的なCashとして把握することも多いです。また、場合によっては余剰資金を長期債券で運用しているケースもあるので、その場合は投資有価証券(investment securities)の内、Cashと考えられるものの金額は把握しておいてもいいかもしれません。
また、短期有価証券は、short-term financial assetsとも呼ばれます。
 

・Account receivable 売掛金

 

売上を計上してから、実際に入金されるまでにはtiming differenceがあり、その間に使う勘定をaccount receivableといいます。自社の営業キャッシュフローや顧客の貸し倒れリスク(bad debt)を考えると、早く回収するに越したことはありません。

 

・Notes receivable 受取手形

 

商品やサービスを販売した後に、約束手形で支払いを受けた場合、Notes receivableを資産計上します。買い手は支払い期間を先延ばしできるアドバンテージを得ますが、売り手にとってはデメリットです。

手形の受け手は、入金日よりも前に、手形を銀行に譲渡して、手数料を支払うことで現金を受領出来ます。それを手形の割引(to discount a note receivable)といいます。

-Receivableを使った他の表現

Loans receivable 貸付金
Interest receivable 未収利息
Dividends receivable 未収配当

 

・Inventory 在庫

 

在庫は少ない方が、キャッシュフローの良化、在庫保有コスト(carrying cost)の圧縮、老朽化(obsolescence)の減少につながるからです。ただし、機会損失や原価低減を考えてのことであれば、キャッシュの潤沢さ次第では必ずしも悪いとは言えません。

 

・Raw material 原材料

 

Raw materialとは、製造するために仕入れた原料や材料のことを言います。

 

・Work-in-progress 仕掛品

 

製品として完成する前の段階で、在庫となっているもののことを言います。製造に時間がかかる製品が多い企業ではWIPは膨らんでいます。

 

・Partially finished products 半製品

 

仕掛品と同じく、製造の途中となっている在庫ですが、販売することが可能な場合には、半製品と区別されます。

 

・Manufactured products/Finished goods 製品

 

自社で製造品の、在庫認識されている部分が表れます。

 

・Merchandise 商品

 

他社から購入してきた商品在庫を表します。

 

・Supplies(on hand/expense) 貯蔵品 販売目的保有でないもの(文房具等)

 

貯蔵品も棚卸資産を構成するものの一つですが、販売目的で保有しているものではなく、文房具や見本品などを言います。

 

・Accrued revenue 未収入金(通常販売活動の売掛金以外、固定資産や有価証券の売却代金等)

 

Accrued revenueは、販売活動に関わる売掛金以外の取引からくるもので、固定資産や有価証券の売却代金の未入金等が挙げられます。

 

・Prepaid expense 前払費用


身近なものだと、家賃の前払いでしょうか。来月分を支払った際に、前払費用で資産計上し、翌月にPLの費用とします。

 

・Allowance for doubtful accounts 貸倒引当金

 

英語を直訳すると、“疑わしい顧客勘定であると認識すること”と訳すことが出来ます。貸し倒れる可能性の高い場合は、事前に費用認識しておきましょうという考えから行われる処理です。一定のルールに基づいて、貸し倒れ実績率を鑑みながら決定しますので、恣意的な計上はできません。

 

◆固定資産の部

 

続いて、固定資産の会計英語です。

 

・Fixed assets 固定資産

 

事業を運営するに当たり、1年を超えて使用する資産のことを言います。ですので、1年未満の短期間で使用されるモノは、「消耗品費」や「事務用品費」といった費用勘定で処理しますので、固定資産として貸借対照表(バランスシート/BS)には計上されません。固定資産は、有形固定資産(Tangible assets)、無形固定資産(Intangible assets)、投資その他資産(Investment and other assets)の3つに区分けされます。また、海外ではよく有形固定資産のみをさして、Fixed assetsという言葉を使用することもあるので、文脈をとらえながら理解する必要があります。

 

・Property, plant and equipment 有形固定資産

 

省略されてPP&E、またはPPEと表記されます。また、上記で少し触れたように、Tangible assetsや、Fixed assetsと表記されることもあります。PPEの数値は会社により表記の仕方も違うため、それが取得価額(Acquisition cost)なのか、もしくは減価償却(depreciation)が進んでいる簿価(Book value/Carrying amount)であるのかはしっかりと認識しなければなりません。また、有形固定資産回転率(tangible assets turnover rate)は売上高/有形固定資産で計られ、有形固定資産が効率的に収益に結びついているかをチェックできます。

 

・Buildings 建物

 

文字通り建物です。建物には“舗装道路や塀など”のいわゆる建物と言われたときにもつイメージだけでなく、それに付随するものも同時に計上されます。また、建物は減価償却の対象となり、耐用年数(Economic life)は設備等に比べて、長期で設定されます。

 

・Land 土地

 

土地(Land)には土地の取得価額だけでなく、手数料(Commissions)や登記料(Registration fees)、整地費用(Land grading fees)が含まれてきます。土地は時間の経過によって、価値が減少するものではないと考えられているため、減価償却は行いません。

 

・Machinery and equipment 機械

 

メーカーではモノづくりをするために、機械に多くの投資を行うので、取得価額(Acquisition cost)は大きくなる傾向にあります。また、機械の計上額には、輸送費(transportation cost)、取り付け費用(Implementation cost)、試験費(Experimental cost)など、全てを含めて計上します。

 

・Furniture and fixtures 工具、器具、備品

 

営業活動を行うために必要なモノのうち、使用年数が1年以上かつ取得価額が10万円以上のものに上記の勘定にて資産計上します。ですので、使用年数が1年未満、または取得価額が10万円未満のものは“消耗品費”として、費用計上となります。

 

・Construction in progress 建設仮勘定

 

有形固定資産の中でも、最後の方に表記される項目で、建設仮勘定は、「建設途中」であるということを示し、他の有形固定資産と性格を異にします。建設中の段階で有形固定資産に支払われた金額が、支出があるたびに建設仮勘定として計上されていきます。完成後は特定の資産に振り替えられていきます。

 

・Accumulated depreciation 減価償却累計額

 

有形固定資産の減価償却費には取得価額と減価償却累計額を表示する間接控除法と簿価のみを記載する直接控除法の2通りを選択できますが、一方で無形資産の償却(Amortization)に関しては、直接控除法しか選択できません。

 

・Lease equipment under capital lease リース資産

 

リースには2つのタイプがあり、借り手が実質的に資産を保有しているとみなされるファイナンスリース、またはキャピタルリースと、実質的に保有しているとはみなされないオペレイティングリースがあります。前者は、途中解約が出来ず、リース物件からの経済的利益やコストを借り手が全て負担する取引です。後者は資産計上されずに、リース料金を損益計算書(PL)に費用計上します。

 

・Intangible assets

 

無形資産には主にソフトウェア(Software)、のれん(Goodwill)、特許権(Patent rights)、著作権(copyrights)、商標権(trademark rights)、販売権(Sales rights)等が含まれます。

無形固定資産はIFRSや米国基準では、償却せずに減損テストのみ行いますが、日本基準においては、一定の基準で償却(Amortization)されます。また権利に関する資産計上は自社で開発してきたか、他社から取得したかによって計上金額に大きな違いがあります。一般的に、後者の方が貸借対照表(バランスシート/BS)への計上額は大きい傾向にあります。

 

・Investment securities 投資有価証券

 

長期保有予定の債権(Held-to-maturity securities)や株式(Available for sale securities)などが、含まれています。また、関連会社への投資(investments in affiliated companies)も含まれます。決算期ごとに株価は時価評価されて、簿価と時価の差額は純資産の中の一つの項目である、その他有価証券評価差額金(Net unrealized holding gains/losses on securities)にて、税効果を含めたうえで計上されます。

 

・Lease deposit 差入敷金

 

差入保証金とは債務者が債権者に対して一定の取引や賃貸借契約に付随する責務を担保するために差し入れる現金のことです。また、長期前払費用は貸借対照表において差入保証金と同じ区分です。差入保証金との違いは「返還されるか、されないか」です。差入保証金は原則全額返還ですが、契約によって返還されない部分がある場合もあります。

 

・Deferred tax assets 繰延税金資産

 

税務上の課税所得と会計上の税前利益は多くのケースで違いますが、適切な税金を会計上の損益計算書(PL)で払っているように見せるのが税効果会計となります。また、その際には繰延税金資産の回収可能性が、会社の財政状態や過去の課税所得等を考慮されます。状況次第では、評価性引当金が計上されます。

 

・Deferred assets 繰延資産

 

繰延資産とは数年間にわたって償却される費用のことで、費用ですが会計上は資産として計上できます。会社法上の繰延資産は、創立費、開業費、株式交付費、社債発行費、開発費がこれにあたり、均等償却か任意償却のいずれかを選択できます。税法上の繰延資産は、償却期間が決められており、その期間で均等償却する必要があります。


◆流動/固定負債の部

 

貸借対照表(バランスシート/BS)の右上の負債に関する会計英語です。

 

・Current liabilities 流動負債

 

一年以内に返済義務が発生するもののことをいいます。安全性の疑われる企業では流動比率当座比率に注意して、極端に低い場合は注意しましょう。

 

・Accounts payable 買掛金

 

営業活動に必要な原材料や商品を仕入れたのちに、まだその金額を支払っていない場合に当該勘定を用いります。

 

・Notes payable 支払手形

 

商品やサービスを購入した後に、すぐに現金ではなく手形を渡したケースで、当該勘定を使用します。

 

・Prepaid income 前受収益

 

サービスの提供前に入金があった場合に使用する勘定です。賃貸、リース、保険料等が挙げられます。

 

・Accrued expenses 未払費用

 

買掛金として計上される原材料や商品以外の購入に関わる未払い額です。契約で定期的な支払いがはっせいするものの未払いで、給与、家賃、保険、賃借料などが考えられます。


・Short-term Borrowings/Loans/Debt 短期有利子負債

 

銀行などの金融機関からの借入のことを言います。尚、1年以内に返済予定の長期有利子負債が含まれていることもあります。

 

・Fixed liabilities

 

固定負債とは1年以内に返済義務が訪れない負債のことを言います。

 

・Long-term debt 長期有利子負債

 

銀行などから借り入れてくるものに加えて、社債(Bonds)、リース債務(Lease obligations)などが組み入れられている場合があります。

 

・Corporate bonds 社債

 

社債とは、企業が必要資金を調達するために発行する債券です。借用金額と返済日、支払われる利息があらかじめ提示されています。企業は一般の投資家から資金調達ができることに加え、銀行借り入れより金利が低くなるケースもあります。

 

・Lease obligation リース債務

 

リース契約後、貸借対照表(バランスシート/BS)にリース資産及びリース負債が計上されます。その後、毎月リース料が支払われますが、リース料の中には支払利息も含まれています。そのため、リース負債も有利子負債の一部と考えられることが多いです。

 

・Allowance for retirement benefits for employees 退職給付引当金

 

企業が従業員に支払う、将来の企業年金や退職一時金を退職給付債務といい、一方外部に年金資産を積み立てているものを年金資産といいます。不足額がある場合は費用として引き当てる必要があり、これを退職給付引当金といいます。

 

・Deferred income tax liabilities 繰延税金資産

 

会計上と税法上の利益の一時的なズレを調整する税効果会計に伴い使用する科目です。

 

◆純資産の部

 

貸借対照表(バランスシート/BS)の右下を構成する純資産に関する会計英語です。

 

・Net assets 純資産

 

純資産とは、資産と負債の差額という概念です。純資産は、株主からの出資金とそれによるビジネスから得た利益のストックを表しており、「株主資本」「評価・換算差額等」「新株予約権」から構成されます。貸借対照表(バランスシート/BS)の右下に記載されます。

 

・Common stock 資本金

 

資本金とはその会社が事業を開始した時に出資を受けた金額のことです。日本の場合、株主からの出資額の半分は資本金に組み入れなければなりません。残りは資本金もしくは資本剰余金に組み入れることができます。また、一千万円を境に法人住民税の均等割税金が変わるので、その点にも注が必要です。

 

・Additional paid-in capital 資本剰余金

 

日本の場合、株主からの出資額の半分は資本金に組み入れなければならないので、残り半分内、資本金に組み入れられなかった部分のことを言います。

 

・Retained earnings 利益剰余金

 

企業が築いてきた利益の蓄積で、会社内部に留保されているものをいいます。株主資本の一部です。

 

・Treasury stock 自己株式

 

企業が自身で保有している、自社株式のことを言います。ROEROAやEPS(一株当たり利益)等の指標を改善し、浮動株数の減少によるM&Aの防衛などが期待されます。

 

・Accumulated other comprehensive income その他包括利益累計額

 

簡単に言うと、損益計算書(PL)上の計算以外で発生する損益です。過年度からの累計額が、貸借対照表(バランスシート/BS)上の純資産の部に計上されます。OCIには、Net unrealized holding gains or loss on securities(その他有価証券評価差額金)、Foreign currency translation adjustment(為替換算調整勘定)、Deferred gains or losses on hedges(繰延ヘッジ損益)等が含まれます。

 

・Non-controlling interest 非支配株主持分

 

非支配株主持分とは、従来の少数株主持分と言われていたのもで、子会社の資本のうち親会社の持分以外の部分のことをいいます。

 

最後に

 

今回は、貸借対照表(バランスシート/BS)に関する会計英語を、出来る限りわかりやすくまとめてみました。そもそも、貸借対照表(バランスシート/BS)の理解が難しい部分もあるので、日本語の解説も出来る限り詳しくしました。

ビジネスで、海外の人とやり取りをする際に、貸借対照表(バランスシート/BS)に関する会計英語を利用して頂き、円滑なコミュニケーションを取っていただけると非常に幸いです。